読む処方箋ー弁護士読書録

新緑が眩しい季節となりました。

新緑は、上方だけでなく、足元にもあります。

ふと、足元に目をやると、コンクリートの割れ目に、ちょっとした土の塊に、緑が目に入ります。「雑草」です。

 

今日の読書録は、稲垣栄洋さん著、三上修さん画の「身近な雑草の愉快な生き方」です。そんな雑草の「生き様」を活き活きと描いた本です。

まず、プロローグからして、「大いなる野望を抱いていたり、試行錯誤の失敗を繰り返したり。切なく、ほろ苦い彼らの懸命な生活ぶりに大いに共感する方もいるだろう。苦し紛れにも見える秘策は皆さんの失笑を誘うことさえあるかもしれない。しかし、逆境に立ち向かい続けるしたたかでたくましい彼らの生き方は、私たちをまちがいなく驚愕させることだろう。」と来ます。雑草への愛情たっぷりなのです。

 

例えば、ぺんぺん草として知られる「ナズナ」の冬越しは、葉を放射状に地面に広げた「ロゼット」と呼ばれるスタイルです。本書では、このロゼットについて「ロゼットは守りではなく攻めのスタイル」と紹介されます。冬越しなら種子で土の中にいるほうがリスクは少ない。けれども、ロゼットであれば、春になるや一気に成長して花を咲かせることができる。「ライバルの少ない時期にいち早く咲かせることができれば、花を求める虫を独占することができる。」というわけです。

この部分は衝撃でした。

ロゼットは守りではなく攻め。

 

「生き残りたい。何としてでも子孫を残したい。」という雑草の強烈な執念と息もつかせぬ迫力の表現、美しい挿絵。

本書を読むとどうしても、地面のあちこちに視線をさまよわせ、路地の隅をしげしげと眺めたくってしまうのですね。

これに、時々にやりと笑う、が加わった人間の姿は「不審」という表現があてはまるでしょうか。