読む処方箋ー最近の人気作家

とにかく笑って元気になれる本、泣けて泣けて心のデトックスができる本、仕事頑張ろうと思える本、スリルものは一時現実を忘れさせてくれますよね。読後の余韻によって、本にはそれぞれ効能があります。まさに読む処方箋。

印刷物離れが指摘される今日、電車の中はスマホをのぞく方々ばかり。でも、本もいいものですよ。

 

最近イチオシの作家が、この「垣谷美雨」さんです。

この方の作品は、面白いものばかりですが、今日ご紹介するのは、「老後の資金がありません」(中公文庫)。

 

 

「娘の派手婚、舅の葬儀、夫婦W失職。がっちり貯めたはずなのに、、、いきなり崖っぷち!!」

いきなりキャッチ―ですよね。最初の数ページでつかまれてしまいます。思わず、「ウンウン、それで?」と膝を乗り出したくなるストーリー展開なのです。

最後には、逆転劇が待っており、ちゃんとスッキリさせてくれますが、悪者ばっさり切り捨て系ではなく、優しい余韻が残るところが本当にいい本。

あれこれある人生だから、週末はこんな本で笑って泣いて癒されて、月曜日からまた、頑張っぺ!

読む処方箋ー90歳からの喝!

「九十歳。何がめでたい」佐藤愛子著

2017年のベストセラーですから、少し旬を過ぎていますが、今日のおススメは、この本です。

私には83歳になる叔父がおりまして。現役で農家の主です。

で、この叔父が「今年最も読まれている本。共感の手紙、ハガキなんと1万通超!」という本書を手に取り、わくわくして読んだところ、「どこが面白いのかさっぱり分からん。どこが面白いんだ?」と送り付けてきたのが本著です。

というわけで、私も読ませていただきました。

 

気が弱いゆえに思ったことが言えず困った、小さいことが気になって困ったという40代、50代からの相談となると、佐藤節は本領発揮します。

 

「人はみな多かれ少なかれ、自分の人生を自分なりに納得のいくものに作るために目に見えぬ血を流しているのです。」

 

この一文は、40代、50代で、刺さる方多いのではないでしょうか。

私たち、平穏に過ごす日々が続き、他人からの批判や他人との対立に弱くなっていないでしょうか。

人生とは、嬉しいこと楽しいことが続く夢のような日々ではないはずです。

 

この本は、90歳からの「喝!」なのです。

ですから、戦争を生き抜き、戦後の貧しい時代に農家の長男として家族を支えてきた叔父が、「どこが面白いか、さっぱり分からん。」のは当たり前、というところでしょうか。

 

さぁ、自分に「喝!」を入れて、明日からの1週間を乗り切りましょう!

 

 

 

 

 

 

 

 

読む処方箋ー弁護士読書録

新緑が眩しい季節となりました。

新緑は、上方だけでなく、足元にもあります。

ふと、足元に目をやると、コンクリートの割れ目に、ちょっとした土の塊に、緑が目に入ります。「雑草」です。

 

今日の読書録は、稲垣栄洋さん著、三上修さん画の「身近な雑草の愉快な生き方」です。そんな雑草の「生き様」を活き活きと描いた本です。

まず、プロローグからして、「大いなる野望を抱いていたり、試行錯誤の失敗を繰り返したり。切なく、ほろ苦い彼らの懸命な生活ぶりに大いに共感する方もいるだろう。苦し紛れにも見える秘策は皆さんの失笑を誘うことさえあるかもしれない。しかし、逆境に立ち向かい続けるしたたかでたくましい彼らの生き方は、私たちをまちがいなく驚愕させることだろう。」と来ます。雑草への愛情たっぷりなのです。

 

例えば、ぺんぺん草として知られる「ナズナ」の冬越しは、葉を放射状に地面に広げた「ロゼット」と呼ばれるスタイルです。本書では、このロゼットについて「ロゼットは守りではなく攻めのスタイル」と紹介されます。冬越しなら種子で土の中にいるほうがリスクは少ない。けれども、ロゼットであれば、春になるや一気に成長して花を咲かせることができる。「ライバルの少ない時期にいち早く咲かせることができれば、花を求める虫を独占することができる。」というわけです。

この部分は衝撃でした。

ロゼットは守りではなく攻め。

 

「生き残りたい。何としてでも子孫を残したい。」という雑草の強烈な執念と息もつかせぬ迫力の表現、美しい挿絵。

本書を読むとどうしても、地面のあちこちに視線をさまよわせ、路地の隅をしげしげと眺めたくってしまうのですね。

これに、時々にやりと笑う、が加わった人間の姿は「不審」という表現があてはまるでしょうか。