「ソロモンの偽証」-読む処方箋

宮部みゆき著「ソロモンの偽証」(新潮社)
 
宮部みゆきさんが10年かけた、全6巻ものの大作ですきらきら
このほど、映画が公開されましたが、前編後編に分かれている、というこちらも大作です。
 

指【あらすじ】
クリスマスの朝、男子中学生の遺体が中学校で発見された。転落死だった。自殺か、他殺か。犯人は誰なのか。謎の告発状まで届く。学校も警察も混迷し、マスコミにかき回される中、女子中学生の決意で、中学生たちが、自分たちで「裁判」をし、真相を明らかにしようと立ち上がる。というようなお話です。
 

nullこの作品で描き出されるのは、第一に、「裁判によってあぶり出される真相」、そして「真相が示すもの」、ですが、法曹関係者としては、あぶり出される裁判の過程そのものに注目しています。
 
 法廷で証人を尋問する作業を、
①ゴールを設定する(その証人にどこまで証言させればよしとするか、あるいはどこまでの証言を減殺すればよしとするか。)
②ゴールにたどり着くためには、何を、どう、どんな順番で聞けば良いかを考える
③ 以上を実行する
という工程に分けて考えるとすると、ここに登場する「検察官役」「弁護人役」の中学生は、これをきっちり、無駄なく遺漏なくやり遂げています。この緻密な作業の積み重ねで、真実に迫っていくわけです。
ここに宮部みゆきさんの渾身の力を感じ、読者はただ、固唾をのんで成り行きを見守るだけです。
主人公はあくまで「中学生」ですが、宮部みゆきさんは、登場人物の力量を現実の中学生のレベルに設定していません。だから、「中学生が裁判をやるとこうなります。」という中学生の世界を描きたかったわけではなく、緻密な計算のもとに行われる「裁判」を通して、真実をあぶり出していく過程を描きたかったのかなぁ、と思う作品でした
ニコッ
 
 この息の詰まるようなやりとり、楽しんでみてはいかがですか?ただし、全6巻です!